文章で稼ぐ贅沢

作詞からプログラミングまで、文字を並べて生きる物書きのひとりごと @ 逗子

タグ:お人好し

お人好しのエピソード。
飲み仲間に「今日30円しか持ってないんだよ」とポケットの小銭を見せられて、その日の勘定を全部持ったことがある。彼は1000万円を超える年収があるのを後に知り、冗談を真に受けた自分が間抜けに思えた。酔っぱらいの戯言はご破算という暗黙のルールがあるなら、KYな私はやはりお酒をやめて正解かもしれない。

しかし真昼間でもお人好しにはアクシデントが降りかかる。締め切りを抱えて焦りまくっていた先日、恵比寿での用事を済ませて駅までダッシュした。湘南新宿ラインの逗子行きまであと2分しかない。自動改札機にスイカをタッチしようとしたら、あれ、幼稚園ぐらいの女の子が前に佇んでいる。「どうしたの?」と声をかけると、「お母さんがいないの・・・」と涙をいっぱいに溜めた顔が振り向いた。もう一度周りを探してごらんと促しても、お母さんらしき姿は見当たらず、とりあえず改札口の端にある事務室に向かった。

ブースの若い駅員さんは、早口でまくしたてる外国人客への応対で忙しい。合間を見て「迷子なんです」と何度か声をかけると、「分かりました。構内放送で流しますので、置いて行ってください」の短い返事。隣で足を震わせている女の子は行先の駅名を教えてくれるが、しゃくりあげて泣いているので言葉が聞き取れない。「大丈夫よ、お母さんが来るまで一緒にいるから」と手をつなぎ、何時間でも待つしかないと心に決めた。締め切りに遅れる言い訳には嘘くさいなと、クライアントへの謝罪方法を考えながら。

5分ほどして遠くから「アンタ、何してんの!」という声が聞こえ、お母さんらしき人が手招きしている。「モタモタしてるからでしょ!」と叱りつけて、後を追いかける女の子と共に走り去ってしまった。そして駅員さんは未だ事務室から出て来ず、次の湘南新宿ラインはあと30分後で、取り残されたのは私だけ?

電車が来たら空いている先頭車両に乗って、逗子まで眠って行こう。シートの端っこを確保して爆睡体制に入ったが、現実は甘くなかった。駅に停まるたび、隣に座ったお婆さんが「ここどこ?戸塚に着いた?」と聞いてくるのである。仕方ないので戸塚まで目を開けてお喋りに相槌を打ち、お婆さんが無事に降りて行ったのを見届けた。

どうしてこうなるのか、自業自得かな。きっと私はポケットに最後の30円しかなくても、誰かに奢ってしまうタイプだろう。でもそれは見栄を張っているんじゃなく、ケチになりたくないからだ。

ケチとは節約家を言うのではなく、思いやりのない人を言うのだと思っている。「ありがとう」「お疲れさま」の言葉を口にするのさえケチる、心の渋ちんだ。どこかのサイトに「ありがとう」の反対語は「あたりまえ」と載っていたが、他人が自分のために動いてくれるのを当たり前と思っているうちは、きっと一番欲しいものが手に入らない。

でもね、子育て中のお母さんなら許す、人生をいっぱい歩んできたお婆さんなら許す。
昼下がりのホームで電車を待っている間、心がほっこりする贈り物を神様がくれた。それは春のように暖かな日差し。もうすぐ線路際にソメイヨシノと菜の花が咲き始めるのを空想して、心の中にパステルカラーの絵を描くのは楽しい。

ebisu

小さな贅沢と幸せを目指してお人好しが行く。明日は都内で会議だけれど、どうか帰りの電車で爆睡できますように(*^^)v
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疑問に思っていたこと。道に迷っているとか探し物をしているとか、見ず知らずの困った人がなぜ自分を見つけて寄ってくるのか、私と同じ不思議を抱えている人も多いだろう。そこで前回の終電エピソードを補足する記事を、同じ境遇である方たちの幸せのために書くことにした。

最終の逗子行きを待つ品川駅のホーム。徹夜仕事で疲れているのでどうしても座りたい。金曜の最終はグリーン車でも座れないことが多いので、椅子取り合戦には負けないぞ!と気合を入れて列に並んでいた時のことである。

小柄なお爺さんがよろよろしながらホームの端を歩いてきた。線路に落ちてもおかしくないほど明らかに酔っぱらっている歩き方だし、服装はホームレスみたいにボロボロで、みんな目を伏せて見て見ぬふりをしている。私だって早く通り過ぎて欲しいと思っているのに、ふとした瞬間からお爺さんはこちらに一直線で、「あのねぇ〜〜、グリーンの切符はどこ?」と声をかけてきた。

あらかじめスマホのモバイルスイカでグリーン券を買っている私は、ホームの売り場がどこか知らない。キョロキョロ見回しても列の乗客たちは知らんぷり。でも何だかそれっぽい機械が見えたので黙って指さしたところ、「あ、そう」とお爺さんは去って行った。

それから5分ほど過ぎてまた似たような状況に・・。お爺さんがどう見ても絶対に私を目がけて歩いてくる。買えなかったと言いがかりを付けられるのかと震えていたら、「おねえさん、グリーン買えたよ。ありがとね」とお礼を言いに来てくれたのだ。

架線トラブルで遅れた最終電車は超満員。座りたーい!と空席を探した私は奇跡的にも、とんでもない席(前回のブログをご参照)に座ることができた。お爺さんを最後までケアしてあげられなかったのを後悔して、やがて爆睡してしまった。

今になって思うに、あの人は神様だったのかもしれない。お正月に頑張って七福神巡りをした中にいた一人の神様かもしれない。グリーン車の温かいシートで睡眠を取りながら逗子まで帰って、友人のタクシー運転手が乗車待ちの列を離れて迎えに来てくれていて、すごく幸せな帰路だったと思う。

こうしてブログを綴る部屋の外からは春一番の強風が吹く音。それは幸せを大きく約束してくれる音だったら嬉しいなあと、いろんなものが寄ってくる自分を贔屓することにした。結局のところお人好しは、自分を幸せにしてくれる魔法なのかもしれないね。仕事へのオファーも増えた今、私と似たような境遇の人に、きっと良いことがあるよと告げたいための補足記事である。
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