文章で稼ぐ贅沢

作詞からプログラミングまで、文字を並べて生きる物書きのひとりごと @ 逗子

カテゴリ: 作詞・コピーライト・文章

2045年には平均寿命が100歳に到達すると、世界の研究者の多くが予測してるという。その頃は後期高齢者となっている自分を思い浮かべながら、今日が50歳の誕生日。占いによると7月7日生まれの女性は愛情深く、同時に多数の事柄を進行できる器用さを持っているそうだ。

お局様として勤めてきた会社では、IT時代について行けず早期退職に志願した。退職金が出たら中古マンションを買って終の棲家とするか、家つきの男性と結婚するか、二者択一の未来が進行中だ。オバさんに相手が見つかるのかと笑われそうだけど、出会い系で知り合った男性と二股かけて付き合っている。

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正樹は5歳年下の中小企業経営者で、バツイチ、母親と同居。
一郎は15歳年上の定年退職者で、奥さんと死別、1人暮らし。
デートは日をやりくりして誤魔化してきたものの、一緒に過ごそうと提案された誕生日のダブルヘッダーは難しく、条件が良かった正樹を選んだ。

幕張のホテルでスイートに一泊し、子どもみたいにディズニーシーで遊ぶ計画。生ミッキーマウスに会えるなんて何十年ぶりだろう。一郎からも「誕生日は何が欲しい?」と聞かれたけれど、年金暮らしの高齢者におねだりしづらくて、その日は女友達と温泉に行くと嘘をついた。

大台に乗っても若見えしなくちゃ。サマーセールで買ったカーゴパンツとロゴTシャツを着て、待ち合わせの駅へと急ぐ。お泊りセットを入れたミニボストンには、恥ずかしながらフリルのついた新品の下着も忍ばせてみた。

リュックを背負った家族連れで賑わう土曜日のターミナル駅。改札口で5分待ち、10分待っても正樹は現れない。「待ってます」とメッセージを送ったまま既読にならないLINEに、30分が過ぎた頃にやっと返信がきた。
「母親が急に具合悪くなって病院に連れて行ってた。大したことなくて今、家に戻ったところ。遅れるので先にホテルで待っててくれる? フロントで名前を言ったら部屋に入れるようにしておく」

大丈夫?家にいたほうがいいんじゃない?と気遣いつつも、必ず行くからと言う正樹のメッセージが嬉しい。電車に乗って数10分、ハリウッド映画に出てくるみたいなホテルに着いて先にチェックインした。

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窓から眺める空が水色からオレンジの夕映えへ、やがて濃紺の星空に変わったころ、ドアチャイムが鳴って正樹が到着。部屋に入らないまま、すぐに予約してあるレストランに行こうと言う。

メインメニューが彼に渡され、キャンドルを灯したテーブルで乾杯。私はピンクシャンパン、正樹はソフトドリンクだ。
「せっかくの誕生日なのにごめん。母親のことで、今日はやっぱり家に戻らないとダメなんだけど、用意していたプレゼントを渡したかったんだ。開けてみて」

渡された小箱には誕生石の指輪。付き合い始めてまだ3カ月なのに、小じわが目立つ年上の女にプロポーズしてくれるの!? でも次の言葉は期待とはちょっと外れていた。

「こういうの趣味じゃないかな。取引先の展示会で勧められて、うちの社で扱おうと思ってる商品なんだ。君はセンスいいから、的確な感想を言ってくれると思って。」
私は早とちりがバレないようにするのが精いっぱい。「そうね、いいんじゃないの?」と高飛車な返事をして、シャンパンのリクエストをした。

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ディナーを終えて部屋に戻り、1時間ほどベッドで過ごした後に、正樹は車で自宅に戻って行った。そのまま寝てしまえない私は、薄暗がりの中で目が冴えている。スイートでポツンと朝を迎えて、明日は女一人ディズニーだなんて絶対に無理。ベッドサイドの時計を見たらまだ電車が動いている時間なので、チェックアウトして帰ることにした。

昼間と違って、休日の深夜となれば電車の乗客はまばら。夏は始まったばかりなのに、秋が訪れたような侘しい風景だ。でも薬指にはプレゼントの指輪が光っているから平気。50歳のお局様だって、年下の社長に巡り合えたんだから、私は勝者だし無敵だ!と口角を上げてほほ笑む。それなのに真っ赤なルビーめがけてポツン、ポツンと涙が落ちていくのは何故なんだろう。

商店街のシャッターが下がった私鉄の駅で降り、トボトボ歩くこと15分。灯りがついていない賃貸マンションの我が家を見あげて、少しだけ肩の力が楽になった。

エレベーターを降りてドアの前に立つと、隅のほうに手提げの紙袋が置いてある。貼り付けた付箋紙には「誕生日おめでとう。邪魔にならないものを入れました」との走り書き。紙袋にはトマトやキュウリなどの野菜たち、京都の漬物、新茶のパック、クッキーの詰め合わせ缶などがゴソゴソと入っていた。

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誰のプレゼントかは推して知るべし。「ちゃんと栄養のあるものを食べてる?」が口癖の一郎が置いていったのだろう。私の実家はとうに無くなっているけれど、田舎の母親から届くごちゃまぜの荷物みたいに、あたたかくて切ない。武骨な65歳の高齢者が一つ一つ吟味しながら詰め込んだ食べ物は、きっと美味しいものばかりのはずだ。

今夜は女友達と一緒と嘘をついたのだから、ガラケーにお礼の電話はできない。そして私がホテルで熟睡していると信じている正樹にも、家に帰ったとはLINEできない。肩をすくめて部屋に入り、テーブルに2人からのプレゼントを並べた。透き通ったルビーを照明にかざして眺めながら、熟したトマトに丸ごとかじりついて、♪Happy Birthday to Me♪と歌ってみる。

正樹と一郎が結婚相手として「帯に短しタスキに長し」なら、今の私は「無用の長物」だ。終わったキャリアが正視できないまま、正樹に対しては若作りしようと焦り、一郎に対しては15歳も年下なんだからとお姫さま気取り。何やってんの?と恥ずかしくなって、♪Happy Birthday to Me♪はワンフレーズしか歌えなかった。

朝になったらネットを見て、新しい職を探そう。50歳になって条件は悪くなったけれど、女一人生きていけるぐらいの仕事は見つかるだろう。だけど婚活は続けさせて。一挙に何もかも失くす勇気が足りず、小ずるいと知りながらも、恋愛は女の最後の糧になる。

2045年には平均寿命が100歳に到達すると、世界の研究者の多くが予測してるという。その頃に正樹は後期高齢者となり、一郎は墓石の下にいるだろう。行くあてのない私はもしかしたら老人介護施設で誕生日を迎える。それでも七夕の短冊に書く願いごとは「いい人が見つかりますように」。隣りのおじいさんに手を添えて、ルビーの指輪と完熟トマトの思い出話を何度も語っているかもしれない。

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毎年7月7日に書いているラブストーリーが12回目となりました。今回は年齢を上げて50歳の独身女性が主人公です。少子高齢化が進み、誰もが何かしらのハンディを持って生きていますが、恋をするのは幾つになっても自由です。一本の長編小説になる恋もあれば、短編集に綴る恋もあるでしょう。でも恋のサイズは文章の長さには比例せず、泣いても笑っても腹が立っても、一つ一つが懐かしいエピソード。あなたのオリジナルラブストーリーが現在進行形なら、終わることなくずっと続いていくことを願っています。
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私が最初に従事した職業は作詞家だ。でもその職業は演歌、アニソン、子どもの歌、CMソング、秋元康を除くと、昭和の名残りかもしれない。今は歌手本人が作詞・作曲をするのがほとんど。シンガーソングライターという呼び名すら死語となってしまった。

よほどの大センセイ以外、作詞家の寿命は限られている。放送作家より若干長いぐらいで、50歳を迎える前に、他の職業にシフトしている人が多いと思う。私もその一人で、40歳から始めたWEB制作とプログラミングがメインになり、作詞の印税はほんのお小遣い程度だ。小学校の音楽教科書には2曲載っているけれど、教科書は無償なので儲かる術もない。その楽曲を掲載(または録音・演奏・カラオケ・配信)した出版社や放送局から入ってくる印税のみである。

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2007年にこのブログを始めたとき、どうやって作詞家になったかの経緯を書いた。

作詞家になるには・その1

作詞家になるには・その2


「その1」から抜粋しよう。
私の場合は高校生の時、無謀な売り込みをしたのがきっかけだ。
親に買ってもらったフォークギターを練習しているうちに、自分でも作ろうと数曲書き溜めた。それをラジカセでカセットテープに録音して、ヤマハ音楽振興会に送りつけたのである。

拙さ丸出しの楽曲。山と積まれたデモテープに埋もれて消えるはず・・が、意外な返事が来た。
「作曲についてはもっと勉強する必要があるが、詞は才能がある。優秀作品としてヤマハのポプコン歌詞集に載せたいので著作権契約をしたい」という内容だった。

一斉を風靡したヤマハのポピュラーソングコンテストは、中島みゆき、長渕剛、チャゲ&飛鳥など多数の有名アーティストを輩出した新人の登竜門。詞を書くのが苦手な人のため、ヤマハが発行する作詞集に載せてもらったのである。しかも2曲だ。

というわけで生まれて初めて書いた詞がディレクターの目に止まり、「もっと作曲を勉強するように」と作編曲の勉強をさせられた。ところが大学生になって遊びほうけたり、結婚と離婚のブランクがあったりして、本当のプロとして作詞家になったのは20歳後半である。

一流の作詞家たちと並んで、加山雄三さんのアルバムに私の作った歌が入ったときは、他人事のようだった。NTTのCMソングに採用されてテレビで流れるのを聴き、作詞家が自分の職業なんだと初めて実感したのである。

それから放送作家・脚本家・構成作家を掛け持ちしつつ、いろんな歌手の方々、テレビ東京のアニメ、NHKの教育番組、お母さんといっしょなどで詞を書きながら、40歳で「文章書き」から「WEBプログラマー」へと職を変えた。どちらも起承転結の伴う文を書くという点で、似たようなものだと思っている。

でも、今だから言うけれど、高校生のとき私が本当になりたかった職業は、作詞家ではなく歌手だったのである。音大に行きたくて声楽も習っていたのに、どうしてあのときディレクターに「歌手になりたいです」と言えなかったのか、還暦となったこの歳でも後悔している。

起きている時間の大半をネットの仕事に費やしている今、沢山の最新情報が目に入ってくる。もしあと10歳、いや20歳若かったら絶対に応募していたと思うオーディションを見つけた。

MUSIC PLANET 「新人アーティスト発掘プロジェクト2018」という、新人ボーカル発掘プロジェクト。なんと満20歳〜49歳までのアーティストを目指す男女が応募できるのだ。未経験者OKで、応募写真は不要、書類審査なしなのは第一関門の敷居が低い。


国内外の有名アーティストを手掛けてきた音楽プロデューサーが面談・審査し、合格すれば本格的なボイストレーニングを経て、売り出しのためのオリジナル楽曲が作られる。レコーディング、アーティスト写真撮影、LIVE出演、そして数々の音楽配信でオリジナル曲が流れるという。

将来モノになるか白紙のまま専門学校やスクールに通うよりも、歌唱審査によって自分が向いているかどうか、ダイレクトに分かるのは手っ取り早い近道だろう。


私は離婚後に音楽スクールに入って現役の大センセイに付いたけれど、習うよりも実践しなさいと仕事を分けてもらい、あっという間にプロになった。周りからは「もともと才能があったからだよ」と言われても、当の本人に自信なんてなかった。でも高校生のとき歌手になれなかった後悔から、巡ってきた機会は絶対に逃がさないと、チャンスの女神の前髪をつかんだのである。

その当時に比べたら、40歳を過ぎてもオーディションに応募できるなんて羨ましすぎる。
問題は多額のお金がかかるんじゃ?という心配。MUSIC PLANETのQ&Aを見ると「面談・審査において費用は発生しません。通過後は、プロジェクト参加時に費用をご負担いただきます」と書いてある。

私だったら無料の面談・審査にトライしてから考えるだろう。自分にボーカルの才能があるかどうか、プロデューサーの顔色を見に行くことが先決だと思うからだ。一つ山を越えて次の山に向かうかは、自分の意思をきっぱり持って考えればいい。

Youtubeを見ていたら、セカオワのFukaseくんが私の作った歌を早口で歌っているのを発見。ワンコーラスだったけれど空で歌ってくれて、あのとき作詞家になって良かったとしみじみ思った。チャンスの女神は後ろ髪もちょっとだけ残してくれていたようである。




MUSIC PLANET

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「うちの子、来年からは小学生なのよ。1LDKの借家から引っ越して、子ども部屋のあるマンションを買いたいと思ってるの。ほんとは専業主婦でいたいんだけど、早く頭金を貯めたいからね。主人と一緒にプランを練りながら働いています。もうすぐ課長に昇進するらしいから、お給料には期待してるの」


仕事を終え、保育園に息子のお迎えに行く夕方の路線バス。学生時代の女友だちにLINEを送って、ふうっと溜息をついた。送ったメッセージの半分は嘘だからだ。マンションを買いたい気持ちは本当だけど、夫が課長に昇進するはずはない。部下の失敗をかばって上司と喧嘩し、2週間前に会社を自主退職したばかりなのだ。

楽しみにしていたボーナスも貰えず、予期せぬ一大事だというのに、家でダラダラしている夫を見るとムカつくばかり。なんとか次の働き口を見つけてくれなきゃ、小さな会社の事務をやっている私の給料だけじゃ生活できない。

「ハローワークに行ってきて! 働き口が見つかるまでは帰ってこないで!」と、今朝は玄関の外に背中を押し出したけど、仕事は見つかったかな。人の良さだけがとりえの夫はいつも、おっとり、のんびりの人。でもね、優しさだけじゃ人間は生きていけないのよ。恋愛時代には大好きだった性格が、今はいちばん嫌いな部分になった。

息子の手をひいて家に戻ると、夫は戻っていてカレーの匂いがしている。独身時代に覚えたという唯一の得意料理だ。エプロンなんかして、お皿に取り分けているカレーの具をみたら、なんと牛肉が入っている。家計がピンチだっていうのに、もしかして仕事が決まった?

声をかける前に、夫が答えを言った。
「いい仕事がなくてね。ごめん。でも今日は暑かったし、君はイライラして忙しいし、みんなで元気をつけなきゃと思って奮発したんだよ」
それからは沈黙の食卓。「パパ、おいしいね〜」と喜ぶ息子の笑い声だけが、狭い1LDKに響いている。

理数系の大学を出て、頭はいいくせに要領の悪い人。いつも貧乏くじを引く人。それが夫だ。同期が先に出世するのをニコニコと喜んでいる様子を見るにつけ、離婚も視野に入れなきゃと考えていた矢先のハプニングだった。明日の晩から実家に帰って、両親に今後のことを相談するときがきたと、横目でカレンダーを見た。

「明日は花火大会だよ!」。息子が7月7日を囲った赤い花丸を指さした。ああそうだ、今年も近くの川岸で、市が主催の花火大会があるんだった。この子が楽しみにしてるんだから、実家に戻るのは翌日にしよう。
「明日は私、花火のときに食べるお弁当の準備があるから、保育園のお迎えに行ってちょうだいね」
夫の返事も聞かないまま一方的に命令して、また沈黙の夜が続いていく。


ポンポン、ポポンポン。あくる日は朝から、花火の開催を知らせる音花火が聞こえてくる。息子の送り迎えを夫に頼んで、もしかしてこの家で過ごすのは最後かもしれない金曜日になった。事務の仕事は定時に終わり、駅の近くのスーパーでお弁当用の食材を選ぶ。

スマホのランプが光っているのに気付き、見てみると夫から。急用ができて保育園にお迎えに行けなくなったというのだ。折り返し電話をしても繋がらず、私の怒りは頂点に達した。出世しないダメ人間だけじゃなく、約束すら守れないクズ!
スーパーの籠に適当に食材を放り込み、慌てて息子のお迎えに行き、家に戻って料理をしてタッパーに詰めて、あっという間に花火大会の開催時刻が近づいてきた。

「パパは?」と何度も聞いてくる息子を無視して、ぐいぐいと手を引っ張って川岸まで急ぐ。出遅れてしまい、私たちが敷物を敷いて座れそうな場所は、人の頭が並んだ後ろのほうしかない。これじゃ花火が上がっても、お弁当どころじゃないよね。

その時にピピピーッとホイッスルの音がした。警備員がこちらに向かって走ってきて、「あっちあっち」と前方を指さす。観覧席の一番前にカラーコーンで囲まれた一角があり、私たちにそこへ行けと言っているのだ。帽子を目深にかぶった顔を見たら、え、え、あなた!?

いつの間にやら、警備会社の臨時社員として就職していた夫は、花火大会の今夜が初仕事。本当はビルの夜間警備につく予定だったのを、無理やりお願いして花火の警備に回してもらったらしい。ずっと私の機嫌が悪いので、何か喜ばせるとびきりのサプライズを考えていたのだ。息子と私の特等席。

「僕のせいでボーナスがもらえなかったし、君が楽しみにしていたバーゲンにも行けなくなっちゃったしね」。花火が終わったその晩、お弁当に詰めた料理の残りを食べながら、夫が何度も「ごめん」をくりかえす。そんな私たちを気にもせず、息子は保育園から持ち帰った七夕飾りに、さらなる飾りを取り付けるのに夢中だ。

「ほら、パパママ。こんな大きな輪っかをつけたよ」
折り紙の短冊に混じって、笹にぶら下がっている大きな黄色い輪は、警備員の腕章。夫が着ていた制服から外して、笹の枝のいちばん高いところにくくりつけたようだ。君たちを見守っているよと言わんばかりに、天井近くでエアコンの風にクルクルと回っている。

それから一カ月後。夫は警備員をやめて、新しい会社に就職した。もっと前に退職していた先輩が立ち上げた会社で、産業新聞にも掲載されるほど業績が急上昇している企業だ。幹部として誘われていた夫は、元の会社をやめるタイミングを図っていたのだという。

家族全員の笑い声が戻ってきた我が家。七夕はとうに終わったけれど、息子の七夕飾りは部屋に飾ったまま置いてある。あの黄色い腕章がお守りみたいに思えて、見るたびに夫に惚れ直してしまうからだ。

マンション購入の頭金を貯めるまでには、あなたに負けないよう、私も一生懸命働くからね。これからもよろしくお願いします。
「こちらこそ、末永くよろしくお願いします」と頭を下げる夫の優しさは、出会った頃から変わらない。パートナーがこの人で良かったと思えることが、今年いちばんのプレゼントとなった。

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昨日、会議で東京に向かう途中、駅の構内に七夕飾りを見つけました。もう7月7日なんですね。
ハードな仕事が続いて睡魔に襲われているけれど、今年で途切れることのないように、毎年アップしているラブストーリーを書き上げました。11回目となった今年は、小さな子どもがいる家族3人の物語です。お気に召したら、拍手ボタンを押してくださいね。
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まだ梅雨が明けない7月の夜は蒸し暑くて寝苦しい。仕事関係の飲み会で酔っぱらい、終電で帰宅できたのは良かったけれど、ハッと目覚めるとネクタイをしたままベッドに転がっていた。また、やっちまったか。

干からびた喉を潤そうとキッチンに行くと、蛇口から水がポタポタ垂れている。あれっ?と後ろを振り返れば、ベッドサイドにグラスが置かれていた。なんだ、ちゃんと用意していたんだと自分を褒めて、スーツを床に脱ぎ散らかしたら、また大の字になる。
ああズボンが皺になるなあ、でも面倒くさい。こんな暮らしを続けている僕のワンルームマンションは汚部屋と言うに等しく、掃除好きな田舎の母さえ呆れて寄り付かないほどだ。

鳴り響く目覚まし時計をうっかり止めてしまった翌朝は、超特急で出勤の支度。床に落ちているスーツを着ると、なぜか皺になっていないのにホッとした。ドアを開けて空を見上げ、玄関先に転がっている傘をつかむ。駅まで走る途中で案の定ポツポツと降り始めたので、傘のワンタッチボタンを押した。

えっ、この傘って!?

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ポンと開いた黒い傘は、内側が星空の模様。恋人だった君が一年前に忘れていった傘だ。メールで知らせようと思ったけれど、あのときは手が止まった。口喧嘩をして気まずかったので、仲直りの道具に取っておこうと小ずるい考えが浮かんだからだ。彼女の置き傘が家にあるっていう安心感で、恋に胡坐をかいていた時期。

でもそれきり、君が僕の部屋にくることは二度となかった。いつもみたいに「ごめんね」のメールが来ないので、しゃーない、僕が折れてやるかと3日ぶりに電話したら、聞こえてきたのは君のお父さんの声だった。ポツリと一言、「娘は事故で亡くなりました」と。土砂降りの中、横断歩道のない道路を走って渡ろうとしたところを、前方不注意の車に撥ねられたという。

付き合い始めて間もなく、ステディな約束もしていなかった僕のことを、彼女のご両親は知らない。焼香の列に並んだ雨の通夜、黒い額縁の中で微笑む君の遺影をまともに見ることさえできずに、やけ酒を飲んで帰ったのは一年前の七夕だった。

駅までダッシュしようとした足が止まり、今は傘の中の星座たちを見上げている。天の川はどこだろうと探していたら、まさかの出来事。小さな星が僕の頬にポツンと落ちてきたのだ。雨が漏ってるんじゃなくて、間違いなく金平糖みたいな形をした星の粒だ。

「酔いすぎたときは、お水を沢山飲まなきゃダメよ」でポツン。
「スーツは皺にならないようハンガーにかけなきゃダメよ」でポツン。
「私から解放されて、次の恋を見つけなきゃダメよ」でポツンポツンポツンポツン。
そら耳に違いないと思うのに、君の声が聞こえて星が降ってくる。

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驚愕のあまり身体がフリーズして、相当な時間が経ったように思う。気付くと星空の傘は何の変哲もない、僕の平凡な黒い傘に戻っていた。すぐに雨は上がり、電車にも間に合って通常通り出勤できたのは、まだ寝ぼけていたのだろうか。

その晩、会社から早めに帰った僕は、必死になって部屋の掃除に励んだ。スーツはハンガーにかけたし、酒も飲んでないのに水を沢山飲んだ。シーツを替えたベッドに入って電気を消し、真っ暗な天井を見上げる。
「もう一度だけでいいから、会えるかな」

一年ぶりにデートをして夜明けの時刻、手を振る君は天の川の向こう側に渡っていく。これは夢を見ているんだと夢の中で思い、僕の心残りは空高く星になった。

朝はゴミ捨て場まで何往復かして、田舎の母に電話をしよう。「もう泊まりに来て大丈夫だからね」。急に人恋しくなった自分はちょっと情けないダメ男である。

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何となくスタートして毎年7月7日に書いているラブストーリー、ついに10回目です。今回は一人暮らしをしている若い男性を主人公にしてみました。選んだテーマは断捨離。目に見える物だけではなくて、心の中に取ってある思い出のアルバムも、時には断捨離しなくちゃいけません。切ないけれど、自分が前に進むためです。今回のお話、気に入ってくれたら、拍手ボタンを押してくださいね。

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雨上がりの空気がぬるんだ日曜日。なまった身体をほぐしにウォーキングに出かけたいが、締め切りに四苦八苦する状況から抜け出せない。明日は仲間内のミニ・パーティーがあるので、徹夜明けのゲッソリした顔を晒さないよう、早めに片付けたいところだ。

そしてもう一つ、何としても時間を取りたいのが3月26日のコンサート。横浜市磯子区民センター(杉田劇場)で行われる、杉劇リコーダーずの定期演奏会だ。彼らは6歳〜85歳まで、46名のメンバーからなる異世代リコーダー・アンサンブルで、地元のみならず日本全国へ演奏活動に出かけ、東日本大震災の復興支援活動も行っている。

私の作詞した「赤いやねの家」を定番にしてくれているご縁で、昨年末に新作を一つ書き下ろした。長年コンビを組んでいる上柴はじめさんのメロディーに詞をつけた「あなたの笑顔」という曲である。

デモを聞いて印象的だったサビの部分にまずは、♪ 笑って! なんだか曇った顔してる 今日よりも 明日はうんといい日だよ ♪ の歌詞をはめ込み、後から全体を構成する作り方にしてみた。何もないところから詞を書くより、この方式が私には百倍も簡単なので、1時間かからずに完成したと思う。

コンサートに向けて歌劇団まで編成したと聞き、どんな演奏がステージに繰り広げられるかが楽しみだ。あくまでも演奏者が主役で、作者は裏方仕事。これまで人前に出たことは殆どなかったが、照れくさいことに今回は壇上でトークコーナーが用意されているらしい。これこそ徹夜明けでは行けないな。

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暑さ寒さも彼岸まで。ニュースによれば、ソメイヨシノが例年より4日早く開花した。1週間後に聴ける「あなたの笑顔」が、ますます沢山の春を運んでくれるように願っている。
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