そろそろ電気を点けたくなる時間。ブルーグレーの空に満月が昇ってきた。
3月20日の午前4時9分、今夜の月は地球に最も近いところを通過する。しかも1992年以来の最短距離になるそうで、エクストラ・スーパームーンと呼ばれている。地球上の磁界に影響が及び、次はアメリカ西海岸に大地震が起きると予測する地質学者もいるようだが、ネガティブな未来は飽き飽きした。今だからこそ美しい月はタイムリーな贈り物。同じ月を同じ時間に見ている人たちと、希望を共有したいと思った。
願い事を叶えるスーパームーンのパワーは次の新月まで続くらしい。何を願おうかと考えているところに、いつも私を心配してくれる友人からの電話が鳴った。
「ちょっとでいいから飲みに出ておいでよ。みんな待ってるよ」
久しぶりに訪ねた馴染みの店は、見慣れた顔たちが「よおっ!」とこっちを振り向く。「逗子は大丈夫だよ」と乾杯のグラスを掲げる。私に電話をくれた友人は、外見は泣く子も黙りそうな強面なのだが、照れくさそうに初めての秘密を教えてくれた。
彼は朝6時に起きたら、まずは神社に行って拝むのを習慣にしているという。
「今日もここに来られて、ありがとうございます。美味しいご飯を食べられて、ありがとうございます。友人たちが元気でいてくれて、ありがとうございます」と、思いつく限りの感謝をするのだそうだ。
「神様には願い事をするんじゃなく、感謝をするんだよ」
亡くなったお母さんの教えを守り、彼は毎朝欠かさず神社に通って感謝を続けている。
時計の針が明日に近づいた。談笑を終えて店を出ると、さっきまでの生ぬるい空気は去り、頭上には涼やかなスーパームーンが私を照らしている。なんて大らかで優しいんだろう。
家に戻ってニュースを見ると、原発に放水を行った東京消防庁ハイパーレスキュー隊の会見の様子が流れていた。声を詰まらせながら答える総隊長3人の目には、堪えきれない涙。命をかけて任務を遂行した隊員たちへ、生還を信じて送り出してくれた家族への「ありがとう」だ。
辛いことは山ほどあり、これからも山ほどあるだろうけど、少しずつ好転していく。その陰には誰かの犠牲と涙がある。月が地球にいちばん近づく午前4時9分が来たら、願いの代わりに感謝の「ありがとうございます」。もう他の言葉は要らない。
コメント
感謝をするのは、神様、仏様共通ですね。
人間は昔から「苦しいときの神頼み・・・」とはよく言ったものですね。
それは間違いなんですよね。
普段、振り向きもしないで困った時だけ頼られても生きている人間だって嫌なものです。
やはり「感謝」に勝るものはないですよね?
地震が起きて一週間。
まさか経験するとも思ってもみなかった大地震。
先日、やっとガソリンを15リットル入れて久々に近場のデパートに行ってきました。
映画館やライトオンなど一部のお店は未だ閉鎖されており、暖房もなしでした。
いつもは開いているドトール、マックまでも閉鎖されてました。
食品売り場と一部アパレルショップ、ゲーセンのみでした。
お弁当があったので、お弁当と、玉ねぎ、飲料水のみ買って帰りました。
アパレルショップに友人がいたのですが、息子に急かされ帰ってきました。
普段の生活がどれだけ恵まれていることか、感謝しなければならないと感じました。
marie様
やっとガソリンが入手できたんですね。良かった!
少しずつ生活が戻ってくると、地震前はどんなに恵まれていたかが分かります。これほどの大災害を経験したのですから、国民は「喉元すぎれば熱さ忘れる」なんてことは絶対にないでしょう。痛みを分かち合いながら、普通でいられることに感謝しなくてはいけませんね。
11日に地震が起きた直後、ずいぶん沢山の方たちが心配して電話してくれたのを知りました。繋がらないので何十回もかけ続けてくれた人もいたそうです。その心使いに「ありがとう」を何十回返しても足りません。独りでいたって、人間は誰かに支えられながら生きているんだと実感しました。
宮城県で孤立している四肢障害施設に物資を届けます。
是非 協力要請お願いします。 特に缶詰等 肉・魚類が足りず 困っています。 よろしくお願いします!
ハミングバード様
ブログ記事にSOSを載せました。慈悲の心を集めましょう!