夕方から呑んで食べて、そろそろ日付が変わる時刻。家路に着くはずが、灯りに誘われてつい立ち寄ってしまう店がある。
日の丸自動車学校のはす向かい、目黒の三田通りにあるラーメン屋「大龍」だ。

大龍

自動ドアを開けると、おとうさん(って勝手に私が呼んでる)が「おっ、来たな〜」とニヤリとし、従業員たちも笑って出迎えてくれる。

「まったくこの人はねー、店が閉まってから無理やり入ってくるし、ワインは持ち込むし、朝まで居座るし、ほんと困った客なんだからさ、ハハハ」。
カウンターのお客に、おとうさんが私を紹介するときの決まり文句だ。

いつも大龍で注文するのは生ビールと3色餃子(海老餃子、しそ餃子、普通の餃子のセット)。
毎日作っているご自慢のチャーシューを少々と、野菜がいろいろ入った浅漬け。これがビタミンCたっぷりで美味しいのだ。
この浅漬けの作り方、京都の某有名料亭の花板さんから伝授してもらったそうで、おとうさんは引き換えに賄い食メニュー2〜3品を教えたとか。

浅漬け

ちなみに驚くなかれ、おとうさんは日体大&パレスホテルの出身。英語はネイティブ並みだし、体育会系子育てを受けた子供たちは、某一流企業で表彰状を貰うほどの優秀さだ。
そんなバックグラウンドは億尾にも出さず、「常連さんたちが毎日来てくれるのが嬉しいからね」と、お昼から深夜まで中華鍋を振って麺を茹でる。

しかし他店同様ご多分にもれず、おとうさんの悩みは求人難。なかなか良い応募者が来ない。
そこで学生時代にバイトしてくれた子たちにSOSの電話を入れると、「よし、わかった!」で快く助っ人に来てくれるのだという。
みんな昼間は学校の先生であったり、老舗ブティックの店員であったりしながら、、夜は勝手知ったる大龍のキッチンで学生時代に戻る。餃子の焼き加減なんてお手の物で、おとうさんの立派な片腕なのだ。

楽しいな。でも言いたくないけど言わなくちゃ。
逗子への引っ越しを打ち明けると、おとうさんはしばし呆然。「せっかく仲良くなったのに〜」としょんぼりした。

ごめんね。引っ越しても時々は襲いに来るからね。
だってまだ私、この店のラーメンを食べたことがないんだから!!