文章で稼ぐ贅沢

作詞からプログラミングまで、文字を並べて生きる物書きのひとりごと @ 逗子

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8月に施行される改正介護保険法により要介護度の判定が厳しくなって、介護度が以前よりも「格下げ」される人が増えると言われている。

例えば要介護度2の母親と同居しながら働いている娘の場合、今度の判定によって介護度2に格下げされるとどうなるか。これまで受けていた平日のデイサービスを減らさざるを得なくなり、自分で親を介護する必要が出てくる。それにより介護離職する人が急増するというのが有識者の予想だ。

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「介護離職」が2018年8月から急増するワケ 改正介護保険法の“致命的欠陥”

超高齢化社会の日本では、年金受給が開始される年齢を先延ばしにしないと国家財政が底をつく。自分の身は自分で支えていけるよう、元気なうちに働いて老後の蓄えを作らなくてはならない。
親一人子一人の家庭で、子どもが介護離職して親の年金で生活していったとしても、親が亡くなったらどうやって生きていけというのか。住居も税金も単身世帯への風当たりは強く、国民年金だけで暮らしていけるはずがない。


8月に改正介護保険法が施行される前に、親を有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅に入居させたいと焦っている人も多いと思う。親が溜めてきた貯金は老人ホームへの入居費用に充てて、月額費は年金で賄えるなら、介護離職しなくても済むからだ。

13年前に脳溢血で半身不随となった私の父は、幾つかのリハビリ施設を転々としたあと、現在の介護付き有料老人ホームに入居した。立派なマンションが買えるほど高額だった入居資金は父の資産を全てあてがい、あとは何とか年金でやりくりしている。

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我が家は親も離婚、一人っ子の私も離婚という家庭環境なので親戚縁者はいない。父が迎えた後妻(継母)はうつ病とアルコール依存症で精神を病み、周りには言えない状況で世を去った。

とにかく孤独な父も私も、死ぬまで自分の身は自分の稼ぎで支えなくてはならないのは一緒。相談できる身内がいないのだから、ドライに割り切って民間サービスの力を借りるしかないのである。

終の棲家となる現在の介護施設を探すに当たっては、ネットで見つけた有料老人ホーム紹介サービスのお世話になった。こちら側の条件に見合った施設の資料をどっさりと送ってもらい、5〜6か所のホームを見学して施設長との面談も行った。

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当時はまだ頭がしっかりしていた継母は、父が亡くなったあとに少しでも多く遺産が自分に入るよう、入居金の安さを第一条件として施設を選ぼうとした。見舞いの足が遠のいたにも関わらず、住まいから近い場所を希望した。コムスンやワタミが運営するホームの名を上げたが、親身になってくれた有料老人ホーム紹介サービスのスタッフは顔を曇らせたのである。

「経済基盤がしっかりした会社が運営しているホームじゃないと、潰れたらお父様の行き場がなくなります」
「要介護度4から5に上がったとき、マンツーマンで介護してくれるスタッフのいる施設じゃないと、身心が弱ってしまいます」

屈託のない意見を言って薦めてくれたのが、デンマークの介護施設を見習って個人が設立した介護付き有料老人ホームである。個人が運営しているなんて最も経営が危なそうな気がしたが、現在は超大手の損保会社が母体となって運営し、理念をそのまま引き継いだ手厚いケアを施してくれている。その間にコムスンは潰れて無くなり、ブラック企業と呼ばれたワタミでは入居者の溺死事故などが起こって施設を売却した。

このブログで「医療・介護・高齢者」のカテゴリーに載せた記事を見れば、父が入居している施設のスタッフがどれほど親身になって介護してくれているかがお分かりいただけると思う。

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腕に内出血の跡が1cmでもあれば看護師から電話があり、状況説明とその後の対処について報告がある。スマホの電話がなって画面に施設名が表示されると「父に何か一大事が起きたのでは!?」とドキッとするけれど、「申し訳ございません。入浴時にお身体を点検したら内出血の跡が見つかり・・・云々」と平謝りされているうちに、この施設に入居させて良かったと心が鎮まっていくのである。

4月には数え歳での卒寿のお祝いをしてくれて、父に年齢を訊ねるとまた89歳なのに「90歳!」と元気よく答える。私がお見舞いに行けば必ず一緒の写真を撮ってくれて、施設でのイベントで父が楽しんでいる写真も送ってくれる。お花見、夏祭り、敬老の日、クリスマス、餅つき大会・・・と、入居者たちと一緒に大笑いしている顔は、新しい家族を得た幸せな表情だ。

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そして必ず必要となる「看取り」についても、医師を交えて取り決めを行い、病院に搬送する延命治療は行わずに施設で看取りを行ってもらうことに決まった。歳を取って独り暮らしをしている私の環境まで考慮してくれて、「お身体は大丈夫ですか、無理しないでください」と気遣いの言葉までくれるのである。

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こうして一人ぼっちの父と娘とが自分の生活を維持していけるのは、13年前に有料老人ホーム紹介サービスのスタッフが、父娘の将来を見据えた上で施設選びを提案してくれたからに他ならない。あのとき「いちばん安いところ」とか「家から近いところ」を優先した基準で施設選びをしていたら、私は老々介護をする身になっていたと思う。ひょっとしたら将来への希望を無くして、もう生きていなかったかもしれない。

老々介護になる前に大事なのは、やるだけのことはトライしてみること。施設の紹介所に登録するなり資料を貰うなり、無料で受けられるサービスは受けまくるべきだ。そこで入所を決めなくたって相談に乗ってもらい、介護にまつわる現状を知るだけでも気持ちは楽になると思うからである。

※ この記事には有料老人ホーム紹介サービスのリンクを書き足していきます。

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草木が空に向かってどんどん枝葉を伸ばしていく5月は、何を見ても生命のエネルギーを感じる。
その反面、枯れていくもの、衰えていくものが更に色褪せて見え、「生者必滅」なんて言葉が浮かんでしまう。

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お見舞いに行かなくちゃ。ケーキ屋さんでプリンを買って、午後から介護施設にいる父を訪ねた。

ちょっと歩けば汗ばむ陽気。駅からたかだか15分の道のりが、やたら長く感じる。89歳の父を見舞う私も、高齢者の域に達したことを実感した。

エレベーターで居室のある階まで上がると、扉が開いた瞬間に父の背中を発見。スタッフステーションのカウンターに向かって座るのが、父の昼間の定位置だ。居室に籠って寝てばかりにならないよう、みんなが声をかけやすい場所にいる。
GW後半とあって、お見舞いにくる家族はいつもより多い。今日は笑顔いっぱいの居住者と、独りで無表情な居住者とに分かれているようだ。

父の肩に手を置いて顔をのぞきこむと、キョトンとした顔。
「私が誰だか分かる?」と聞いても首を横に振るだけで、呆けが前より進んでいるのが分かった。

お土産のプリンをスプーンで口一杯に運んで、むせて咳き込んで、目を真っ赤にして、それでも食べることしか眼中にない。前より明らかに口数が減り、と言うよりほとんど喋らなくなって、頭を縦に振るか横に振るかだけ。

「私が誰だか分かる?」の質問を何度か投げかけると、やっと声は出すようになったものの、出てくるのは妹たちの名前ばかりである。呆けの症状として当たり前かもしれないけれど、一人娘の名前を忘れてしまうなんて、父は生きているのに家族を失った気がして切なくなった。

食べてはこぼし、食べてはこぼしの口元を拭いていると、赤くなった目で私をじっと見る。何かをモゴモゴ言っているけれど、濁音で聞き取れない。その様子を察した看護師さんから、「痰を吸引しましょう。少しは喋りやすくなります」の申し出があった。

しばらくして戻ってきた父は、言語治療師に習った通り、口を大きく開けて、二言だけ喋ったのだ。
「ゆり子、きれい」

あとにも先にもその二言だけだったけれど、涙が出るほど嬉しかった。
お腹が空いたでもなく、横になりたいでもなく、呆けた父が必死に伝えてきたメッセージ。そこには一生分を凝縮した愛があるのを感じる。

もう自分で自分を高齢者だなんて言わない。ずっと綺麗でいようと心に決めて、スタッフに家族写真を撮って貰った幸せな時間だった。

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